数学科「問題解決の授業」について 相馬一彦 


 

☆「主体的,対話的で深い学び」を実現する授業

 

 2017年3月に学習指導要領が改訂され,「主体的,対話的で深い学び」を実現することが強調されています。教師の説明を聞いて練習を繰り返すだけでは,数学の力は身に付きません。数学の授業でも「主体的,対話的で深い学び」が大切です。

 「問題解決の授業」は,「主体的,対話的で深い学び」を実現する授業です。授業のはじめに「問題(考えるきっかけ)」を提示し,そこから「課題(本時の目標に対応する事柄:めあて)」を明確にして,個人や集団で解決に向かって考え合います。

 

 問題・・・ 考えるきっかけを与える問い
   (教師が与えるもの)
   *生徒 「今日はどんな問題だろうか?」
    ↓
 課題・・・ 問題の解決過程で生じた疑問や明らかにすべき事柄
  (生徒がもつもの)
   *生徒 「考えてみよう!」「やってみよう!」

 

 はじめに提示する問題は,単なる例題や練習問題ではありません。また,その問題を解決すること自体が授業の目標ではありません。

 「問題解決の授業」での問題は,生徒にとっての課題を引き出すためのきっかけになるものです。

 

 

☆考えさせながら教える授業

 

 「問題解決の授業」では,問題や課題を解決する過程で,生徒は新たな知識や技能,数学的な見方や考え方,主体的に学ぶ態度などを同時に身に付けていきます。結果だけではなく「問題の解決過程を重視する授業」です。

 

  問題の解決過程で新たな知識や技能,数学的な見方や考え方,主体的に学ぶ態度などを同時に身に付けさせる授業

 

 教師が一方的に教え込むのではなく,問題や課題に対して生徒が主体的に取り組むことを大切にします。問題をきっかけにして,「考えさせながら教える授業」であるともいえます。主体的に考えながら身に付けたことは,例えば受験が終われば忘れてしまうということではなく,長期的に定着するように思います。

 なお,「問題解決の授業」については,次の本に詳しくまとめています。

 □相馬一彦著『数学科「問題解決の授業」』明治図書,1997

 □谷地元直樹著『はじめての算数科「問題解決の授業」

  明治図書,2024

 

☆ポイントは,よい問題

 

 「問題解決の授業」では,授業のはじめに提示する問題が授業を大きく左右します。本時の目標を達成するために,生徒の実態等を考慮した上で,よい問題を工夫することが求められます。また,「問題解決の授業」を日常的に行っていく上では,よい問題を蓄積しておくことが大切です。

 問題の蓄積のひとつとして,次の本で各100題ずつの問題とその授業例を紹介しています。これらも参考にしていただければと思います。

 □相馬一彦編著『「問題解決の授業」に生きる「問題」集』

  明治図書,2000

   □相馬一彦/佐藤保編著  『新「問題解決の授業」に生きる「問

  題」集』,明治図書,2009   

 

☆日常的に授業改善を

  

 私たちは,児童・生徒に確かな学力を育むために「よい授業」をしたいと願っています。「問題解決の授業」を日常的に行っていくことで授業が改善されて,それが「よい授業」の実践につながり,確かな学力が育成されると考えています。

 次の本では,授業改善のための教材研究のポイントをまとめています。また,全学年全単元の単元指導計画及び略案(授業例)を紹介しています。これらも参考にしていただければと思います。

 □相馬一彦/谷地元直樹著『「問題解決の授業」を日常化する! 

  中学校数学科の授業改善』,明治図書,2020

   □相馬一彦/谷地元直樹編著『単元指導計画及び略案でつくる

  中学校数学科「問題解決の授業」第1~3学年』,明治図書,

  2021 

 □相馬一彦/谷地元直樹編著『新3観点対応!中学校数学科

  「問題解決の授業」のテスト問題&学習評価アイデアブッ

  ク』,明治図書,2022